制作国:2010/アメリカ
上映時間:80分
原題:devil
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
監督:ジョン・エリック・ドゥードル
出演:クリス・メッシーナ
ローガン・マーシャル=グリーン
ジェフリー・エアンド
ボヤナ・ノヴァコヴィッチ
ジェニー・オハラ
ボキーム・ウッドバイン
ジェイコブ・バルガス
マット・クレイヴン
ジョシュア・ピース
ジョー・コブデン
閉じ込められている場所:エレベーター
―逃げ場と視界を奪われたエレベーター内での密室連続殺戮劇ー
あらすじ
物語はとある男性が高層ビルから飛び降りることから始まります。
男性の手にはロザリオが握られていましたが、事件性が見られなかったため、
警察は自殺と判断します。
ちょうどその時、自殺現場の近くのビルで警備員の男性、精悍な男性、老女、
可憐な女性、セールスマンの計5人が同じエレベーターに乗り合わせます。
しかし、そのエレベーターが突如停止し、電波も遮断され外部と連絡が取れず、
5人はエレベーター内に閉じ込められてしまいます。
エレベーターという他人とのパーソナルスペースが保てない空間に閉じ込められ、
5人は不快そうにしながらもすぐに動き出すだろうと余裕の表情で待っていますが、
突然エレベーター内の電気が消え、再び点いたときに女性が怪我を負っていたことにより事態は急変。
電気が消える直前まで女性にちょっかいをかけていたセールスマンを疑い、
彼を犯人と決めつけて4人はセールスマンを監視します。
するとまた電気が消え、次に点いた時に彼らが見た光景は、
犯人だと思っていたセールスマンの変わり果てた姿。
誰もが容疑者となり得るエレベーターという閉鎖空間で、互いを疑いあう4人。
その後も明かりが消えるたびに悲惨な死に方をして、次は自分が殺されるかもしれないと残った人間の精神は極限まで追い詰められていきます。
そんな彼らを救出すべく動くのは管理室でエレベーターの異変に気付いた
信心深い警備員と、老齢の警備員、そして近隣で起こった自殺の調査でビルに訪れていた刑事。
エレベーター内で次々と起こる殺人の犯人が誰かを突き止めるために
エレベーター内の全員の身元の情報収集をする刑事は、やがて驚愕の真実を知ることになる。
見どころ
この映画の見どころの1つ目は、ただエレベーターという閉鎖空間にただ閉じ込められるだけではなく、電気が消えることにより視界も奪われ、挙句の果てには電気が消え、次に点いた時には必ず人が死んでいるという、幾重にも重なった恐怖の条件を前にした登場人物の極限まで追い詰められた心理状態です。
彼らは少しでも怪しいと感じた人物を一方的に疑いますが、しかし次の瞬間にはその疑っていた人物が死んでいる。
1人、また1人と死んでいくなか、逃げ場のないエレベーターで彼らの心情はじょじょに殺される前に殺してしまえといった風に追い詰められていきます。
電気が消えるたびに次々と起こる怒涛の展開や変化していく登場人物の心理状態から一瞬たりとも目が離せません。
2つ目は、密室であるエレーベーター内を、管理室のモニターで他者が見ることができ、一方的にではありますが連絡も取ることができる点です。
密室というのは外部との連絡が取れないことがデフォルトと思い込んでいた私には、この展開は実に新鮮でした。
しかし、いくら外部と連絡が取れようが、彼らが助けようと周りが動こうが、悪魔という人を超越した存在には一切歯が立たず、悪魔がいかに理不尽か、人間が悪魔のような存在にいかに無力かを思い知らされるようでした。
3つ目は、悪魔は遠い存在でなく、私たちのすぐ身近にいると言わんばかりのカメラ演出です。
最初、逆さになった町を上から眺めるアングルで物語は始まります。一見それっぽい雰囲気を演出するためかなと何気なく見ていたのですが、結末や制作秘話を見てから改めて見ると、悪魔が次の獲物を物色していると解釈すればしっくりきます。
その他にも、エレベーターに乗る前の登場人物の1つ1つのカットは、人物を紹介するのと同時に悪魔が彼らを標的に定めた瞬間なのではないか?と捉えると、あまりにも計算された演出に思わず唸りました。
これからこの映画を観る方には、何気ないシーンも意味があると思って注意深く観て頂きたいです。
感想
全体的な感想としては、テーマが一貫していたので、演出に一切の無駄がなく、終始飽きずに観ることができる映画でした。
声優はどの方も上手で違和感もないので、字幕と吹替どちらで観ても楽しめます。
どちらで観るか迷われている方は、物語のテーマを正確に把握しながら観たいという方は字幕。
作品に入り込みたい、映像だけに集中したい人は吹替で観て頂ければよいと思います。
ホラーにも様々なタイプがあるので、貞子や呪怨のような、おどろおどろしいホラーを期待してみる人にとっては物足りないかもしれません。
ですが作品としての出来は非常に良いです。
DVDには特典映像や制作秘話があり、メインストーリーで語られなかった登場人物の生活のワンシーンを観ることができ、制作陣が何を思ってこの映画を撮ろうと思ったのかが語られているのでオススメです。
この映画のレビューを見ていて、何人かが指摘していた「悪魔が人を裁くのはおかしくないか?悪魔は人を堕落させる存在なのでは?」という点は、制作秘話で明かされています。
ネタバレしてしまうと、悪魔は義憤に駆られて彼らを裁いたのではなく、罪を犯しながらも償わず自分を偽り続けている彼らを好き勝手にいたぶり、魂を奪って地獄に落とすために彼らを殺していただけです。私もこれは制作秘話を見てから気づいたのですが、改めて映画を見直すと、冒頭の整備士の語りに「用心せよ。悪魔は獅子のように歩き回り、誰を食い尽くそうか求めている」という一文がありました。
他にも悪魔から逃れる方法などを作中で説明してくれています。
映画の何気ない一言も、ちゃんと意味があるんだなあと実感しました。