制作国: イギリス・アメリカ合衆国
上映時間:119分
原題:The Shining
配給:ワーナー・ブラザーズ
監督:スタンリー・キューブリック
出演: ジャック・ニコルソン
シェリー・デュヴァル
スキャットマン・クローザース
ダニー・ロイド
閉じ込められている場所:ホテル
あらすじ
豪雪のため、冬の間閉鎖される「展望ホテル」というホテルがありました。雪でホテルが傷んではいけないので毎年管理人を雇っているこのホテルでは以前孤独から精神的におかしくなってしまった管理人が妻と2人の娘を斧でばらばらにし、自分も猟銃で自殺するという事件が起こっていました。
そのホテルに小説家志望のジャックと妻ウェンディー、息子のダニーが新しい管理人一家としてやってきました。
ダニーには不思議な超能力=シャイニングがありました。ホテルにやってきた時から、ダニーは237号室が気になって仕方がありません。他人には見えないものがダニーには見えてしまうのです。血が噴き出すエレベーター、手をつないだ双子の姉妹。
ハロランという料理人がホテル内を案内します。彼もまた、超能力を持っており、ダニーの力に気づきました。そして「237号室には近づくな」と告げます。
そして、父ジャックは新作を書こうとタイプライターに向かうものの、なかなかいいものが書けず苛ついていました。精神的に追い込まれたジャックは幻想を見るようになります。
ある日、ダニーがホテル内の廊下を三輪車で遊んでいたところ、気になっていた237号室のドアが開いているのに気がつきます。ジャックの仕事部屋ではその日自分が妻子を斧で切り刻んでしまう悪夢を見たことを妻のウェンディーに嘆いていました。疲れているせいだと妻がなだめていると、虚ろな目で首から顔にかけて内出血のあざができたダニーが現れました。自分以外にこのホテルにいるのはダニーとジャックだけ、ウェンディーはジャックを責めました。しかしダニーによると変な女性に首を絞められたというのです。慌ててそのことをウェンディーはジャックに告げ謝りましたが、すでに幻覚も見え精神を蝕まれているジャックの耳には入りませんでした。しかし237号室が気になったジャックは自分が確認してくると告げ、その部屋へ向かいました。
ジャックが237号室を訪れると、部屋の奥のバスルームに女性の影が見えました。その女性はゆっくりとジャックに近づいてきます。とてもきれいでスタイルのいい、魅力的な女性でした。二人は抱き合いキスをします。しかし部屋の鏡にうつっていたのは老いぼれた女性でした。驚いたジャックですが、妻には237号室にはなにも異常がなかったと告げます。
ある日、ジャックは自分にだけ見えるバーテンダーのロイドと話をしていました。そのバーにはこの世に実在しないたくさんの人たちが楽しそうに会話をしています。ジャックにウエイターがぶつかり、服を汚してしまったため、詫びてジャックを洗面所へ連れて行きました。服の汚れを取りながら、二人は話します。ウエイターの名はグレーディー。ジャックはその名を聞き、ここの管理人か訪ねました。そんな記憶はないと答えながらもグレーディーは超能力を持ったダニーが自分たちの世界(死後の世界)に外部の者を連れ込もうとしている、自分は自分の意に沿わない妻子を「しつけた」(殺害した)と告げます。
このことを聞いたジャックはとうとう精神錯乱状態に陥り、外部と連絡を取れるもの全てを壊していきました。そして自分も妻子を「しつける」ためウェンディーの元へ向かいます。怯えたウェンディーは木製バットを手にして詰め寄ってくるジャックを殴り階段から突き落とし、気絶してしまったジャックを食料貯蔵庫の中へ閉じ込めました。目が覚めたジャックの耳にはグレーディーの「あなたにはできますかな」という挑発の言葉が聞こえていました。ウェンディーは疲れてベッドサイドに包丁をおいて横たわっていました。そこへぶつぶつと「レッドラム・・・レッドラム・・・(REDRUM)」と呟くダニーが現れドレッサーの上の真っ赤な口紅でドアにREDRUMという文字を書きます。ダニーの大きくなっていく声に気づいて起きたウェンディーは鏡に映ったドアをみて「MURDER(殺人)」という単語に気づき身の危険を感じました。
遠くから貯蔵庫から脱出し、斧をもったジャックが近づいてきます。その頃、展望ホテルの異常を察知し、ハロランが雪上車に乗ってやってきますが、ジャックに気づかれ斧で殺されてしまいます。ダニーとともにバスルームの窓から脱出して逃げようと考えたウェンディーでしたが、窓の大きさが小さくダニーしか脱出することができません。ジャックはすでに一枚ドアを隔てたところまで近づいてきました。持っていた斧でドアを壊して侵入しようとするジャックですが、ダニーが雪の中へ逃げたのを追いかけるためホテルの敷地内にある、巨大迷路へ入り込みます。
ウェンディーはなんとかしてダニーと展望ホテルの敷地から脱出しようと出口まで向かいますが、そこで殺されたハロランの死体を目撃し、彼女もまた精神の限界を迎え幻覚を見始めました。グラスを持ち乾杯をするグレーディーやエレベーターの血の海。
その頃ダニーは雪で真っ白な巨大迷路を斧を持って追いかけてくるジャックから逃げていました。幸いにも階段から落ちた衝撃でジャックは足を痛めていたので、子供のダニーですがなんとか距離を稼いでいました。真っ白で、すべてが同じ道に見える迷路の中を「ダニー!」と叫び足を引きずりながらジャックは必死になって追いかけます。ダニーは逃げながらも、分厚い雪のため、自分の足跡が道に続いているのに気づきました。そして冷静な判断でその足跡を逆に利用して、ジャックを混乱させて逃げ延びようと考えました。
見事にジャックはダニーの仕掛けに引っかかり、ダニーはなんとか迷路の出口へ出ることができました。出口ではウェンディーが待っていました。ダニーはウェンディーのもとへかけより、ハロランの乗ってきた雪上車で展望ホテルから逃げ出しました。
そして翌朝。ジャックは迷路で凍死していました。展望ホテルのバーには写真が飾られています。ダンスフロアでとられた、舞踏会の写真です。1921年7月4日のその舞踏会の写真の中央でジャックは笑ってシャンパンを掲げていました。
見所
この映画の見所は閉ざされた冬のホテルで徐々に精神を蝕まれ、狂っていくジャックやその恐怖を体全体で表現するウェンディーの演技力、また映像の雰囲気や怖さを助長するような効果的な音響、スタンリー・キューブリック監督の計算された演出です。
また、原作はitやショーシャンクの空にの元となった刑務所のリタ・ヘイワース等を執筆したスティーブン・キングの小説「The Shining」です。しかしこの1980年公開のスタンリー・キューブリックのシャイニングは全く原作とは異なっており、原作ではしっかりと描かれるダニーの「シャイニング」の秘密はあまり触れられず、ホテルで以前起こった斧で双子の娘と妻をばらばらにしてしまう事件も今回のジャックの気が狂いダニーやウェンディーを殺してしまおうとしたのも、ジャックの輪廻転生という描き方をしています(トイレでのグレーディーとの会話や、最後の時系列が現在とは合わない舞踏会の写真からジャックが以前もホテルの管理人であったことがわかります)。
そして、映画の映像内では鏡が現実世界と死後の世界を効果的に表しています。237号室で抱き合った美しい女性は鏡に映った姿は老いぼれた女性であったことや、ダニーが口ずさみ口紅でドアに書いた「REDRUM」も鏡に映ると「MURDER(殺人)」に意味を変えること。鏡は現実を映し出す大切なアイテムになっており、視覚的に恐怖を与えます。
感想
シャイニングではほかのホラー映画のような幽霊やゾンビが出てくるわけではないものの(237号室の老婆やあの世の人間は出てくるが)、はじめは意識していなかったものでも未進めていくうちにどんどん違和感のピースがつながり徐々にはらはらと怖くなっていく映画でした。そして今年シャイニングの40年後を描くダニーが主人公の続編「ドクタースリープ」が公開されました。そちらも合わせるとより楽しめます。