LODGE【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

制作国:アメリカ
上映時間:92分
原題:DON’T BLINK
監督: トラヴィス・オーツ
出演: ミーナ・スヴァーリ、ブライアン・オースティン・グリーン、ジョアンヌ・ケリー他
閉じ込められている場所: ロッジ内

 

あらすじ

山奥のロッジに車が3台向かっていました。ロッジまであと300メートル、看板にはこの先休憩所、ガソリンスタンドは無し。最終地と書かれていました。

女性5人男性5人がロッジに着きます。ロッジの前にはガソリンスタンドがあり、ガソリンが切れた車に補充しようとしますがキーがないとガソリンは出ないとわかりました。ロッジには管理人がいるはずですが、何度呼んでも出てきません。女性陣がロッジの中を散策します。ロッジの中には誰もいないはずですが、テーブルの上には食べかけの食事や飲みかけのマグカップがそのままになっています。トイレに行くとメイク道具もそのままになっていました。

 

このロッジは無人であるということがわかりました。しかしなぜ食べ物やメイク道具がそのままであるのか、それぞれ手分けをして人を探すことにしました。キッチンでガスレンジの上のフライパンは火がかかったままでした。流し台の下の扉を開けると内側には「help me」と書かれていましたが、気がつきませんでした。また、部屋の鏡には「Don’t Blink」瞬き厳禁、と書かれていますが気がつきません。ロッジは暖かいのに湖は凍っています。鳥も一羽も飛んでいません。また、中身がそのままのほ乳瓶、天井の首つりロープを見つけました。

 

この奇妙な人も虫も鳥も一匹もいない状況に彼らは恐怖を抱き始めました。アレックスという男がここから逃げようと提案します。しかしここにある車のガソリンを全て集めても1台の車のガソリンタンク半分にも満たず、山の途中で車が止まってしまいます。するとトレーシーがいなくなったということに気づきます。探し回りますがどこにもいません。

 

すると次はノアがいなくなったと気づきます。残っている全員が今の状況を確認し始めました。こんなに人が消えているのに、死体はどこにもないことが不思議です。アレックスは速く逃げようといい多数決をとりますが、逃げるに賛成したのは3人のみでここにとどまることにしました。これ以上仲間が消えてしまわぬよう、ジャックがリーダーとなり鍵を閉めて全員一緒にいること、トイレは2人で行くことを決めました。

 

それからもふとしたときに一人ずつ消えていきました。

 

サムがアレックスから銃を奪ってここを出て行くといい、止めようとしたアレックスが肩を撃たれてしまいました。サムはシャーロットをつれて車で逃げようとしましたがすぐ止まってしまいました。ジャックとクレアが見に行くとそこにはサムはいませんでした。何があったのかとアレックスはシャーロットの首を絞めて話せと脅迫します。消えてしまったのは車のキーとサム自身。アレックスはどうせ死ぬんだとヤケになり始めました。その後もエラが消えてしまいました。残るは4人です。ドアをノックする音が聞こえました。開けると消えたはずのノアがたっていました溝に落ちていたと主張します。アレックスはノアの足を銃で撃ちました。そして玄関から外に引きずりだします。助けてくれという悲鳴が途中で消えてしまいました。きっと彼も消えてしまいました。アレックスはやけになってしまいました。消えた人たちは痕跡がないのです。いきなりアレックスは自分を銃で撃ちました。これで痕跡が残ります。ジャックが「瞬き厳禁」といいます。アレックスの死体だけでなく、ソファや壁の血も消えていました。

 

そうしていると電話がかかってきました。ロッジの予約電話です。ジャックは「現在予約は扱っていません」と答えました。クレアがその電話を使って警察に電話しました。事故が起こったと伝えると山の奥にあるため3時間はかかるとのことです。ジャックとクレアは3時間、見つめ合っていよう、瞬き厳禁でと約束します。

 

いきなり停電になりました。焦ってとりあえずろうそくをつけます。まだ無事でした。クレアがトイレに行きたくなってしまいます。今残っている3人で一緒にトイレに行きました。するとクレアが目の前でいきなり消えてしまいました。ろうそくがだんだん短くなってきました。時間がたち、二人の集中力も持たなくなってきて思わず二人は目をつぶってしまいました。するとジャックが消えてしまいました。クレアただ一人になってしまいます。

 

外からサイレンの音が聞こえてきました。無我夢中で「私はここにいる!!」と叫びながら玄関のドアを開きます。玄関の外にはパトカーがたくさん止まっていました。状況等も詳しく聞かれずにクレアはパトカーの後部座席に乗せられます。クレアは疲れてしまって体を曲げて目をつぶってしまいます。顔を上げたら周りの人たちは消え去ってしまいました。

 

みどころ

10人が到着した直後ロッジを確認して回る際の少し前まで誰かがいたはずなのにふと消えていたり、自分たちも次々に閉じ込められた空間で訳のわからない消え方をしていく不気味さが見所です。大げさな流血シーンや痛々しいシーンなどは少なめなのでグロテスクなものが苦手な方でも楽しめる作品だと思います。

 

感想

10人の若者がロッジ内で奇妙な消え方をしていく、原題の「DON’T BLINK=瞬き厳禁」、話の流れはよくある話ではありますがわくわくしながら観ることのできる映画だと思います。どうしてこういうことがおこったのか?というネタばらしをあまりせずにヒントをたくさん散りばめて考察するのが楽しい映画はたくさんありますが、このLODGEはヒントがかなり少なくて考察の段階まで進むことができず、結局どうして人が跡形もなく消えてしまうのかが分からなさすぎてもやもやしてしまうところがあります。好き嫌いが分かれてしまうタイプの映画かもしれません。

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ミザリー【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

制作国: アメリカ合衆国
上映時間:108分
原題:Misery
配給:コロンビア映画
日本ヘラルド映画
監督:ロブ・ライナー
出演:ジェームズ・カーン
キャシー・ベイツ
閉じ込められている場所:ロッジ

 

あらすじ

ポールというひとりの小説家の男がいました。彼は「ミザリー」という女性がヒロインのミザリーシリーズを執筆していてそれらの本は大人気でした。

 

彼は、ミザリーシリーズを終わらせたいと考えていて、ミザリーを最終巻で殺すことによりシリーズを終わらせようとしていました。そして新作を書くため雪の中のロッジへ泊まっていましたが、進捗報告の電話がないことを心配した編集者の女性がバスターという保安官に電話をかけ、その後ロッジの主に電話をかけます。その管理者の話によると、ポールは火曜日の吹雪の日にチェックアウトしているというのです。

 

ポールは雪道で車がスリップして雪に埋もれ瀕死状態でした。目が覚めたとき、ポールはベッドの上にいました。そして中年女性に介抱されていました。彼女はアニー・ウィルクスと名乗り、自分が看護婦だったこと、吹雪がひどくて病院にも運べず、電話線も切れていることを話しました。道が通れるようになればすぐに病院へ運ぶといい、今は彼女が応急処置を施しているため足を動かさないよう、足を固定されています。

彼女はポールの正体を知っており、ミザリーシリーズのファンで愛想のいい女性でしたが、かなりヒステリックで何か気にくわないことがあると癇癪を起こします。

 

その後も、ポールの新作が下品な言葉が使われているため気にくわずに原稿を目の前で焼き払ったり、彼女のペットのメスブタに「ミザリー」という名前をつけかわいがっていたり、ミザリーシリーズの結末に腹を立て、目の前の椅子を壁にぶつけ壊したりと、ポールはアニーを恐れてこの家から一刻も早く逃げ出さなければいけないと考えます。

 

その頃、ポールが行方不明であることが新聞記事に載っていました。クレジットカードを使った記録もなく、姿も目撃されないため、ポールはすでに死んだものとされていました。

 

その頃、アニー宅では、ミザリーの結末を気に入らないアニーが目の前でミザリーが死んでしまう原稿を焼き払いました。そしてポールはこの頃からアニーに鎮痛剤として処方されていたノヴリルという薬をベッドのスプリングの中にため込むようになりました。後日ご褒美として電気カミソリと机とタイプライターをプレゼントしました。そして、ミザリーを生き返らせた新しい原稿を書くように指示します。しかしアニーの用意したタイプライター用紙が高級なもので印字の文字がにじむためいつも使っているタイプライター用紙を用意してもらえないか訪ねます。アニーは高級なものをわざわざ用意したのに文句をつけられたことに腹を立て立ち去り車で町までタイプライター用紙を買いに行きます。

 

部屋に残されたポールはアニーが落としていったヘアピンを広い、部屋の鍵をピッキングし、家を物色しました。そこで電話を見つけますが電話機の中身は取り外されており、つながりません。車いすで移動しているとペンギンの小さな置物を落として割りそうになりますがなんとかキャッチして元の場所に戻すのですが最初の向きと逆向きにして置いてしまいました。そして物色しながらノヴリル40錠を入手します。車の音がして大慌てで部屋に戻り大汗をかいてしまいます。そんなポールを見てアニーは不審がりますが痛みのせいだとごまかします。

 

アニーにおびえながらポールはミザリーを生還させた設定をつくりあげます。そしてミザリーの生還を祝い二人で祝福の夕食を共にします。ポールはアニーの目を盗んで地道にためておいたノヴリルの粉末をアニーのワイングラスに入れましたが、結局ワインをこぼしてしまい計画は失敗に終わりました。

 

アニーの不在を狙い2度目の物色をしていたポールはスクラップブックを見つけ、読み進めるうちに、アニーがこれまで看護師の立場を利用して30人以上の人間を殺しながらも処罰されずに生きていることを知ります。そして台所から盗んだ包丁をベッドの間に隠してアニーの帰りを待っていましたが、目を覚ますとポールの体は縛られていました。ペンギンの置物野市が変わっていたことでアニーはポールの脱走に気がついたのです。逃げ出さないようにとアニーは治りかけていたポールの足をハンマーで殴り骨を折ります。

 

後日、アニーの存在に気づいたバスター保安官がアニーの家に訪れようとしていました。車の音を聞いたアニーはポールに注射を打ち地下室に放りこみました。バスター保安官が家に到着し、部屋の中を物色してポールの声を聞き地下室のポールの存在に気づきますが背後からアニーに撃たれ、死んでしまいました。

 

ポールと心中しようとするアニーですが、ポールにミザリーの小説を完成させてからにしたいといわれ、思いとどまります。地下室でライターオイルを手に入れてたポールは原稿を書きながら原稿が完成間近であったためアニーに3つのものを要求します。一本の煙草とマッチとドンペリです。準備してきたアニーが持ってきたグラスは1つであったので、アニーの分も持ってくるよう指示しました。そして戻ってきたアニーの目の前で読ませていないミザリーの結末の原稿にライターオイルをかけマッチで火をつけました。

 

アニーは結末をどうしても読みたくて燃えかけの原稿に飛び込み、床に這いつくばったアニーの頭にポールはタイプライターを振り下ろします。揉み合いの末なんとかポールはアニーを撃退しました。

 

それから1年半の月日がたちました。ポールは「高等教育」という本を出しました。編集者の女性と出版のお祝いをしているところでした。その女性に監禁された体験記を書くように勧められましたが、ポールは断りました。体験記を書くにはもう一度あの恐怖を思い出さなければならず、遠目に見えたウエイトレスがふとアニーに見えるほど、未だにポールはアニーのトラウマから抜け出せていないのです。

 

みどころ

この映画の見所はアニー役のキャシー・ベイツがアニーのヒステリックであり、サイコパス気質を感じさせる女性像を演じきっている素晴らしい演技力だと思います。アカデミー主演女優賞も獲得しているキャシー・ベイツの演技は臨場感にあふれ、一回見るとなかなか忘れられないくらいの怖さを残していきます。映画のほとんどが閉ざされたアニーの家でのアニーとポールだけのシーンなのですが、恐ろしすぎるキャシー・ベイツの演技力で飽きずに画面の中に吸い込まれるように見てしまいます。

 

また、運ばれた当初は雪が降り積もっていましたが、季節が巡る中、誰も訪れない山の中の家で二人が生活する様子が非常に奇妙で孤独感を浮き彫りにしています。閉ざされたアニーの家や、天候、映画内の情景がポールの感情や置かれている状況を示唆しているようにも思えます。

 

アニーの作家ポール、そして彼の書いたミザリーシリーズが好きすぎて愛しすぎるあまり異常な行動をとり続ける奇妙な行動は今でいう「ストーカー」そのものです。映画「ミザリー」ではあまりにも奇妙に、大げさなストーカー行為を描いていますが、案外誰にでも近くにこのような恐怖は潜んでいるということを思い出させてくれます。

 

感想

映画「ミザリー」は「it」や「シャイニング」などホラーやサスペンス小説でヒット作を次々出すスティーヴンキングが書いた同名小説「ミザリー」が原作となっています。映画全体を通して深く考察しなければ気づかないようなキーワードがあるわけでもなく、起承転結がわかりやすいストーリーになっており、また少々痛々しい場面はあるもののあまりにも過激な流血シーンなどは映像化されていないため多くの人が受け入れやすい作風であると感じます。

 

小説版とストーリーが大きくかけ離れている訳ではないのですが、小説版では映画版で十分恐ろしかったアニーがもっともっと恐ろしく描かれています。また、バスターが駆けつけるシーンも小説版とは異なっているので、両方見てみると2倍楽しめるかもしれません。

 

映画「ミザリー」が公開された1990年当時はまだ「ストーカー」という言葉が浸透していなかったといいます。ストーカー、サイコパス気質がすごく、ヒステリックな彼女の恐怖を見ていると、幽霊やゾンビなんかより、よっぽど人間が恐ろしく感じます。

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シャイニング【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

制作国: イギリス・アメリカ合衆国
上映時間:119分
原題:The Shining
配給:ワーナー・ブラザーズ
監督:スタンリー・キューブリック
出演: ジャック・ニコルソン
シェリー・デュヴァル
スキャットマン・クローザース
ダニー・ロイド
閉じ込められている場所:ホテル

 

あらすじ

豪雪のため、冬の間閉鎖される「展望ホテル」というホテルがありました。雪でホテルが傷んではいけないので毎年管理人を雇っているこのホテルでは以前孤独から精神的におかしくなってしまった管理人が妻と2人の娘を斧でばらばらにし、自分も猟銃で自殺するという事件が起こっていました。

 

そのホテルに小説家志望のジャックと妻ウェンディー、息子のダニーが新しい管理人一家としてやってきました。

 

ダニーには不思議な超能力=シャイニングがありました。ホテルにやってきた時から、ダニーは237号室が気になって仕方がありません。他人には見えないものがダニーには見えてしまうのです。血が噴き出すエレベーター、手をつないだ双子の姉妹。

 

ハロランという料理人がホテル内を案内します。彼もまた、超能力を持っており、ダニーの力に気づきました。そして「237号室には近づくな」と告げます。

 

そして、父ジャックは新作を書こうとタイプライターに向かうものの、なかなかいいものが書けず苛ついていました。精神的に追い込まれたジャックは幻想を見るようになります。

 

ある日、ダニーがホテル内の廊下を三輪車で遊んでいたところ、気になっていた237号室のドアが開いているのに気がつきます。ジャックの仕事部屋ではその日自分が妻子を斧で切り刻んでしまう悪夢を見たことを妻のウェンディーに嘆いていました。疲れているせいだと妻がなだめていると、虚ろな目で首から顔にかけて内出血のあざができたダニーが現れました。自分以外にこのホテルにいるのはダニーとジャックだけ、ウェンディーはジャックを責めました。しかしダニーによると変な女性に首を絞められたというのです。慌ててそのことをウェンディーはジャックに告げ謝りましたが、すでに幻覚も見え精神を蝕まれているジャックの耳には入りませんでした。しかし237号室が気になったジャックは自分が確認してくると告げ、その部屋へ向かいました。

 

ジャックが237号室を訪れると、部屋の奥のバスルームに女性の影が見えました。その女性はゆっくりとジャックに近づいてきます。とてもきれいでスタイルのいい、魅力的な女性でした。二人は抱き合いキスをします。しかし部屋の鏡にうつっていたのは老いぼれた女性でした。驚いたジャックですが、妻には237号室にはなにも異常がなかったと告げます。

 

ある日、ジャックは自分にだけ見えるバーテンダーのロイドと話をしていました。そのバーにはこの世に実在しないたくさんの人たちが楽しそうに会話をしています。ジャックにウエイターがぶつかり、服を汚してしまったため、詫びてジャックを洗面所へ連れて行きました。服の汚れを取りながら、二人は話します。ウエイターの名はグレーディー。ジャックはその名を聞き、ここの管理人か訪ねました。そんな記憶はないと答えながらもグレーディーは超能力を持ったダニーが自分たちの世界(死後の世界)に外部の者を連れ込もうとしている、自分は自分の意に沿わない妻子を「しつけた」(殺害した)と告げます。

 

このことを聞いたジャックはとうとう精神錯乱状態に陥り、外部と連絡を取れるもの全てを壊していきました。そして自分も妻子を「しつける」ためウェンディーの元へ向かいます。怯えたウェンディーは木製バットを手にして詰め寄ってくるジャックを殴り階段から突き落とし、気絶してしまったジャックを食料貯蔵庫の中へ閉じ込めました。目が覚めたジャックの耳にはグレーディーの「あなたにはできますかな」という挑発の言葉が聞こえていました。ウェンディーは疲れてベッドサイドに包丁をおいて横たわっていました。そこへぶつぶつと「レッドラム・・・レッドラム・・・(REDRUM)」と呟くダニーが現れドレッサーの上の真っ赤な口紅でドアにREDRUMという文字を書きます。ダニーの大きくなっていく声に気づいて起きたウェンディーは鏡に映ったドアをみて「MURDER(殺人)」という単語に気づき身の危険を感じました。

 

遠くから貯蔵庫から脱出し、斧をもったジャックが近づいてきます。その頃、展望ホテルの異常を察知し、ハロランが雪上車に乗ってやってきますが、ジャックに気づかれ斧で殺されてしまいます。ダニーとともにバスルームの窓から脱出して逃げようと考えたウェンディーでしたが、窓の大きさが小さくダニーしか脱出することができません。ジャックはすでに一枚ドアを隔てたところまで近づいてきました。持っていた斧でドアを壊して侵入しようとするジャックですが、ダニーが雪の中へ逃げたのを追いかけるためホテルの敷地内にある、巨大迷路へ入り込みます。

 

ウェンディーはなんとかしてダニーと展望ホテルの敷地から脱出しようと出口まで向かいますが、そこで殺されたハロランの死体を目撃し、彼女もまた精神の限界を迎え幻覚を見始めました。グラスを持ち乾杯をするグレーディーやエレベーターの血の海。

 

その頃ダニーは雪で真っ白な巨大迷路を斧を持って追いかけてくるジャックから逃げていました。幸いにも階段から落ちた衝撃でジャックは足を痛めていたので、子供のダニーですがなんとか距離を稼いでいました。真っ白で、すべてが同じ道に見える迷路の中を「ダニー!」と叫び足を引きずりながらジャックは必死になって追いかけます。ダニーは逃げながらも、分厚い雪のため、自分の足跡が道に続いているのに気づきました。そして冷静な判断でその足跡を逆に利用して、ジャックを混乱させて逃げ延びようと考えました。

 

見事にジャックはダニーの仕掛けに引っかかり、ダニーはなんとか迷路の出口へ出ることができました。出口ではウェンディーが待っていました。ダニーはウェンディーのもとへかけより、ハロランの乗ってきた雪上車で展望ホテルから逃げ出しました。

 

そして翌朝。ジャックは迷路で凍死していました。展望ホテルのバーには写真が飾られています。ダンスフロアでとられた、舞踏会の写真です。1921年7月4日のその舞踏会の写真の中央でジャックは笑ってシャンパンを掲げていました。

 

見所

この映画の見所は閉ざされた冬のホテルで徐々に精神を蝕まれ、狂っていくジャックやその恐怖を体全体で表現するウェンディーの演技力、また映像の雰囲気や怖さを助長するような効果的な音響、スタンリー・キューブリック監督の計算された演出です。

 

また、原作はitやショーシャンクの空にの元となった刑務所のリタ・ヘイワース等を執筆したスティーブン・キングの小説「The Shining」です。しかしこの1980年公開のスタンリー・キューブリックのシャイニングは全く原作とは異なっており、原作ではしっかりと描かれるダニーの「シャイニング」の秘密はあまり触れられず、ホテルで以前起こった斧で双子の娘と妻をばらばらにしてしまう事件も今回のジャックの気が狂いダニーやウェンディーを殺してしまおうとしたのも、ジャックの輪廻転生という描き方をしています(トイレでのグレーディーとの会話や、最後の時系列が現在とは合わない舞踏会の写真からジャックが以前もホテルの管理人であったことがわかります)。

 

そして、映画の映像内では鏡が現実世界と死後の世界を効果的に表しています。237号室で抱き合った美しい女性は鏡に映った姿は老いぼれた女性であったことや、ダニーが口ずさみ口紅でドアに書いた「REDRUM」も鏡に映ると「MURDER(殺人)」に意味を変えること。鏡は現実を映し出す大切なアイテムになっており、視覚的に恐怖を与えます。

 

感想

シャイニングではほかのホラー映画のような幽霊やゾンビが出てくるわけではないものの(237号室の老婆やあの世の人間は出てくるが)、はじめは意識していなかったものでも未進めていくうちにどんどん違和感のピースがつながり徐々にはらはらと怖くなっていく映画でした。そして今年シャイニングの40年後を描くダニーが主人公の続編「ドクタースリープ」が公開されました。そちらも合わせるとより楽しめます。

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CABIN【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

制作国: ロシア
上映時間:95分
原題:THE CABIN IN THE WOODS
配給:ライオンズゲート(英)、クロックワークス(日)
監督:ドリュー・ゴダード
出演: クリステン・コノリー、クリス・ヘムズワース、アンナ・ハッチソン、フラン・クランツ、ジェシー・ウィリアムズ
閉じ込められている場所:森の中

 

あらすじ

5人の若者たちデイナ、カート、ジュールス、マーティ、ホールデンは従兄弟が所有しているという山小屋へ向かいました。山奥なので携帯の電波もつながりません。5人は道中のガソリンスタンドに立ち寄りました。ガソリンスタンドには愛想の悪い店主がいて、目的地の山小屋は持ち主が何度も変わっているといわれます。不気味な雰囲気が漂っていました。山小屋までのガソリンを車に入れてもらい、5人は山小屋に向かいます。

5人が山小屋にたどり着きました。それぞれ部屋割りが決まると、自室に向かいました。ホールデンの部屋には動物が解体されているような不気味な絵が飾られており、気味が悪かったのでその絵を壁から外しました。すると壁がマジックミラーになっていることに気づき、隣の部屋のデイナが丸見えになっていました。そのことを仲間と相談し、ホールデンとデイナは部屋を交換しました。

 

実はこの山小屋は謎の組織によってさまざまな場所に監視カメラが設置され、研究員たちにモニタリングされていました。ガソリンスタンドにいた男も研究員の仲間の一人でした。この組織は古の神に生贄をささげる儀式を行っていて、5人を様々な方法でコントロールして、殺す順番を決めていました。

 

5人はこのことをもちろん知らないので、酒を飲みながら楽しく過ごしていました。「告白か挑戦か」というゲームをして盛り上がっていました。ジュールスは挑戦を選び、マーティの指示で壁に飾られている狼の剥製にキスをします。次に順番が回ってきたデイナは挑戦を選びました。彼女が挑戦を選ぶと口にしたとたん、地下室の扉が日田来ます。それを見てジュールスはデイナに一人で地下室を見るように指示しました。

 

地下室の中には古びたがらくたのようなものがたくさん置かれています。実は地下室内の物は研究員たちが仕掛けていて、何を取るかによってシナリオが変化する仕組みになっていました。デイナの悲鳴でほかの4人も地下にやってきました。5人がそれぞれ様々なものに興味を示しています。デイナはある日記を手に取りました。その日記には、虐待で殺されてしまった子供たちのことが書かれており、日記の最後のフレーズを読み終えると、山小屋から離れた森の中で死んだはずの親子がゾンビになってよみがえってしまいました。研究所内では賭けが行われていて、5人の殺害に向けて行動を起こし始めました。

 

最初の生贄に選ばれたのはジュールスでした。カートとジュールスは2人で夜の森へ行きました。ジュールスは気づいていませんが研究員たちによって彼女の体は性欲を向上させる薬の影響を受けていました。また、森の中はフェロモンの霧を噴射されていて二人は盛り上がりますが、突然ゾンビ一家が襲ってきて、ジュールスは殺されてしまいました。カートは背後から襲われますが何とか山小屋に戻りました。

4人は異常な事態を把握しますが、研究員の誘導によりバラバラになってしまいます。マーティは途中にカメラに気づいてしまって、ナイフで刺されて連れていかれました。なんとか生き残った3人は車に乗り込み、山小屋から脱出しました。トンネルを出ようとしますが、研究員により出口をふさがれてしまいました。カートがバイクを使って何とか崖を飛び越えようとしますが、目に見えないバリアのようなものにぶつかり、カートは転落死してしまいました。

 

目に見えないバリアをみて、デイナは組織の存在に気が付きました。車内にはゾンビが潜んでいて、車が湖に落下しました。デイナは何とか車から脱出しました。その姿をモニタリングしていた研究者たちは拍手喝采です。(神の生贄に選ばれる若者は「淫乱」、「戦士」、「学者」、「愚者」、「処女」と決まっていて、「淫乱」が初めに死に、「処女」が生き残るか最の死ぬかと決まっているため。)

 

研究所内で電話が鳴ります。電話によると死んだと思われていたマーティがまだ生きているらしいのです。マーティは湖でデイナを救い、2人は地下室のエレベーターに乗って研究所の中へと向かいました。

 

エレベーターの中で二人は恐ろしいものを目にしました。次々に正方形の小さな部屋が表れて、その中には様々なモンスターたちがいました。2人が研究所内に入り込んだことを知った研究員たちは慌てて特殊部隊を出動させますが、2人はコントロール室までたどり着いていました。システム解除のボタンを押すと、正方形の小さな部屋の中に閉じ込められていたモンスターが一斉に部屋の外に放出されました。特殊部隊が2人を捕まえようとしますが、放出されたモンスターの餌食になってしまいました。なんとか2人は生き延びて、地下の偶像エリアにたどり着きます。そして館長が現れ、自分たちが神にささげられる生贄である事実を知ります。館長によると、この作戦が失敗すれば蘇った神の力で人類は滅亡するそうです。作戦を成功させるには日の出前にマーティを殺さねばなりません。

 

マーティを殺す決断を一度はしたものの、デイナには彼を殺すことはできず、作戦は失敗して、建物が崩壊し、人類が滅亡してしまいました。

 

みどころ

若者が山奥の山小屋に行き、そこで恐ろしいことが巻き起こるというありがちな設定を見事に覆していく「どんでん返し映画」です。研究所での作戦やモニタリングをしているわけもわかりやすくストーリーの中に組み込まれているので、怪しげでやけに先進的な研究所での様子と山奥の様子が2視点で見勧められるところも面白いです。

 

また、本作に登場する正方形の小さな部屋の中のモンスターたちは王道的ホラー映画のオマージュが多く盛り込まれているようなので、たくさんホラー映画を見てきた人こそ楽しめる作品になっているとおもいます。

 

感想

若者が山奥の山小屋に行く、恐ろしい目に合うというホラー映画のありがち設定で始まったので、どんな展開になっていくのだろう…と思っていましたが、結果どんでん返しな展開で楽しめました。

 

研究所の人たちの視点と若者たちの視点2つがどちらもしっかり見ることができるのも面白いと思いました。研究所の人たちのたくらみや賭けの内容もふわっと表現するのではなくわかりやすくしっかりとストーリーの中に盛り込まれていたので、最後まで楽しむことができました。

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4×4 殺人四駆【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

制作国:アルゼンチン・スペイン合作
上映時間:92分
原題:4×4
配給:ギャガ
監督:マリアノ・コーン
出演:ピーター・ランサーニ、ダディ・ブリエバ
閉じ込められている場所:車内

 

あらすじ

ある日、シロ・ベルムーデスは路上に駐車してある車の車上荒らしをしようとします。テニスボールで車のカギ部分をいじり、ドアを開けると車のカーナビを取り外し、リュックの中にしまいました。そして車から出ようとするとカギがかかっていました。内側からカギを開けようとしましたが、開きません。すべての内側からのカギを開けようとしますが開きません。

工具でガラスを割ろうとしますが、ガラスは割れません。後部座席のパーツを外そうと手を差し込むと左腕を怪我してしまいました。先ほどの工具でドアを破壊しようとも試みますがびくともしません。シロは無我夢中でフロントガラスに銃で発砲しますが、ガラスは割れずにそのままシロの右ひざに跳ね返ってきました。

 

シロは着ていた自分のシャツで止血します。外にいる女性が車の窓を鏡代わりにして口紅を引いています。しかしシロのことは見えていないようなのです。必死でシロは外の女性にアピールしますが気づいてもらえませんでした。持っていた携帯電話も電池切れです。車から出られないまま夜になってしまいました。車にはコオロギが1匹だけ入り込んでいます。

 

朝が来ました。シロは車内のものを盗んだらすぐに出るつもりだったので、必要最低限の持ち物しかリュックには入っておらず、のみかけのペプシもとっくに飲み干してしまっていました。

 

カーラジオを聞いて歌っていると、車に電話がかかります。着信はこの車の持ち主でした。シロが電話を取ると、車の持ち主は話し始めました。名は産科医のエンリケ・フェッラーリ、今までに28回も車上荒らしにあっていて警察に届けても治安が良くなるわけでもないので、自分で完璧な車を作って車上荒らしをする犯人を閉じ込めてやろうと考えていたのでした。その罠にシロがまんまとはまってしまいました。

 

車は車上荒らしに合うと自動的にドアがロックします。防弾仕様、中で動いても車体は揺れないように作られていて、防音、防弾、偏光ガラスです。燃料タンクだけは防弾仕様にはなっておらず、遠隔で爆発させることもできるそうです。閉じ込められたシロが脅すと通話は切れてしまいました。

 

通話が切れると車内はエアコンが効き始めました。もちろんシロはエアコンを操作することはできません。凍えながら止血したシャツをもう一度着て、足ふきマットで風をふさごうとしますがうまくいきません。しばらくしてエアコンが切れてエンリケから電話がかかります。エンリケはシロに説教をします。通話が切れるとパトカーがそばを通りました。見つけてくれることを期待しましたが、警察官は「偏光ガラス使用禁止による罰金通知書」をフロントガラスに貼ると立ち去ってしまいました。

 

またしてもエンリケから電話がかかってきます。国民識別番号と名前を教えろとシロに言いました。シロが名前を教えると、エンリケは後ろの洗浄液を飲むように言いました。シロは洗浄液を飲みます。

 

車に閉じ込められて3日目になりました。シロはまだドアを開けようとしています。エンリケから電話がかかってくるとシロは怪我をしていると訴えました。エンリケに誘導されながらシロは怪我の状態を説明しました。するとエンリケは「熱があるなら寒いだろう」といい次は暖房を入れました。車内は暑くなりました。暑さにシロが苦しんでいるとエンリケは自分の余命が残り1年であることを告げました。

 

若者が車上荒らしをしにやってきました。外から運良く開けてはくれないだろうかと期待しますが、若者は車を開ける前につかまってしまいました。夜になるとコオロギを自分の口の中に入れようとしますがやめて座席に戻します。

 

翌日エンリケにシロは返してくれと訴えます。エンリケはブレーキペダルの裏にチョコチップがあることを教えてくれて、シロはそれを食べました。少し元気を取り戻し、再びドアを壊そうとします。ほんの少しだけ穴が開いて、そこから叫びますが外に声は届かないようです。また、エンリケから電話がありシロの妻と息子に10万ドルを渡したといいました。エンリケはシロの過去を調べシロが殺人を犯していたことを知り、指摘しますがシロは言い訳をします。そしてエンリケは電話を切りました。

 

夜になり、シロは穴からコオロギを外に出してやりました。

 

シロは夢を見ていました。エンジンボタンを何度も押しているとエンジンがかかりました。車はバックにのみ操縦可能なようです。シロはバックで運転してわざとぶつかり、後部座席のガラスを割ります。そして脱出して外を歩き、水と食べ物を得て、警備員に発砲しました。

 

しかし、現実は車から出ることができません。このまま自殺しようかとも考えているとエンリケから電話がかかりました。私を見ろと言われ前を向くと車の前にエンリケが立っていました。そして車の中に入ってきます。シロにマリファナを与えるとエンリケはピーナッツチョコを食べながらシロの傷口の膿を出そうとしていました。するとエンリケに電話がかかります。その隙を見てシロが発砲し逃げ出そうとします。社外で二人がもみ合っているのを女性警官が止めようとしますがエンリケがシロを人質に取り、銃を構えました。

 

そのまま2時間が経過しました。交渉人がエンリケに要求を聞きます。エンリケは車上荒らしに何回もあっていること、町の治安が良くならないことを訴えました。交渉人はシロに水をやれと言って水を渡しました。エンリケはシロを開放し、そのあと車に乗り込みました。すると車は爆発してしまいました。

 

みどころ

ほぼ車内でのシーンですが、役者の演技力や、音響、絶妙な間が観る人を飽きさせずに物語に引き込んでくれます。拷問のようなシーンはこちらも苦しくなってしまいますが、テンポよく進んでいき、エンリケが実際に登場するシーンからのどんでん返し的な展開はみどころです。

 

感想

ただ密室内が舞台のスリラー映画ではなく、もっと深い伝えたいテーマを感じ取れる作品でした。人の生や舞台のアルゼンチンの社会問題という伝えたいことをわかりやすく物語の中に埋め込まれており、最後の方はテーマについて考えさせられました。

 

途中から車内でシロはエンリケの電話の指示通りに洗浄液をのんだりするのですが、もう少しシロ自身が車内でなんとか生き延びるために自分自身のアイディアでのサバイバルシーンがあるとスリル感が増すのかなと個人的に思いました。

 

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