制作国: アメリカ合衆国
上映時間:108分
原題:Misery
配給:コロンビア映画
日本ヘラルド映画
監督:ロブ・ライナー
出演:ジェームズ・カーン
キャシー・ベイツ
閉じ込められている場所:ロッジ
あらすじ
ポールというひとりの小説家の男がいました。彼は「ミザリー」という女性がヒロインのミザリーシリーズを執筆していてそれらの本は大人気でした。
彼は、ミザリーシリーズを終わらせたいと考えていて、ミザリーを最終巻で殺すことによりシリーズを終わらせようとしていました。そして新作を書くため雪の中のロッジへ泊まっていましたが、進捗報告の電話がないことを心配した編集者の女性がバスターという保安官に電話をかけ、その後ロッジの主に電話をかけます。その管理者の話によると、ポールは火曜日の吹雪の日にチェックアウトしているというのです。
ポールは雪道で車がスリップして雪に埋もれ瀕死状態でした。目が覚めたとき、ポールはベッドの上にいました。そして中年女性に介抱されていました。彼女はアニー・ウィルクスと名乗り、自分が看護婦だったこと、吹雪がひどくて病院にも運べず、電話線も切れていることを話しました。道が通れるようになればすぐに病院へ運ぶといい、今は彼女が応急処置を施しているため足を動かさないよう、足を固定されています。
彼女はポールの正体を知っており、ミザリーシリーズのファンで愛想のいい女性でしたが、かなりヒステリックで何か気にくわないことがあると癇癪を起こします。
その後も、ポールの新作が下品な言葉が使われているため気にくわずに原稿を目の前で焼き払ったり、彼女のペットのメスブタに「ミザリー」という名前をつけかわいがっていたり、ミザリーシリーズの結末に腹を立て、目の前の椅子を壁にぶつけ壊したりと、ポールはアニーを恐れてこの家から一刻も早く逃げ出さなければいけないと考えます。
その頃、ポールが行方不明であることが新聞記事に載っていました。クレジットカードを使った記録もなく、姿も目撃されないため、ポールはすでに死んだものとされていました。
その頃、アニー宅では、ミザリーの結末を気に入らないアニーが目の前でミザリーが死んでしまう原稿を焼き払いました。そしてポールはこの頃からアニーに鎮痛剤として処方されていたノヴリルという薬をベッドのスプリングの中にため込むようになりました。後日ご褒美として電気カミソリと机とタイプライターをプレゼントしました。そして、ミザリーを生き返らせた新しい原稿を書くように指示します。しかしアニーの用意したタイプライター用紙が高級なもので印字の文字がにじむためいつも使っているタイプライター用紙を用意してもらえないか訪ねます。アニーは高級なものをわざわざ用意したのに文句をつけられたことに腹を立て立ち去り車で町までタイプライター用紙を買いに行きます。
部屋に残されたポールはアニーが落としていったヘアピンを広い、部屋の鍵をピッキングし、家を物色しました。そこで電話を見つけますが電話機の中身は取り外されており、つながりません。車いすで移動しているとペンギンの小さな置物を落として割りそうになりますがなんとかキャッチして元の場所に戻すのですが最初の向きと逆向きにして置いてしまいました。そして物色しながらノヴリル40錠を入手します。車の音がして大慌てで部屋に戻り大汗をかいてしまいます。そんなポールを見てアニーは不審がりますが痛みのせいだとごまかします。
アニーにおびえながらポールはミザリーを生還させた設定をつくりあげます。そしてミザリーの生還を祝い二人で祝福の夕食を共にします。ポールはアニーの目を盗んで地道にためておいたノヴリルの粉末をアニーのワイングラスに入れましたが、結局ワインをこぼしてしまい計画は失敗に終わりました。
アニーの不在を狙い2度目の物色をしていたポールはスクラップブックを見つけ、読み進めるうちに、アニーがこれまで看護師の立場を利用して30人以上の人間を殺しながらも処罰されずに生きていることを知ります。そして台所から盗んだ包丁をベッドの間に隠してアニーの帰りを待っていましたが、目を覚ますとポールの体は縛られていました。ペンギンの置物野市が変わっていたことでアニーはポールの脱走に気がついたのです。逃げ出さないようにとアニーは治りかけていたポールの足をハンマーで殴り骨を折ります。
後日、アニーの存在に気づいたバスター保安官がアニーの家に訪れようとしていました。車の音を聞いたアニーはポールに注射を打ち地下室に放りこみました。バスター保安官が家に到着し、部屋の中を物色してポールの声を聞き地下室のポールの存在に気づきますが背後からアニーに撃たれ、死んでしまいました。
ポールと心中しようとするアニーですが、ポールにミザリーの小説を完成させてからにしたいといわれ、思いとどまります。地下室でライターオイルを手に入れてたポールは原稿を書きながら原稿が完成間近であったためアニーに3つのものを要求します。一本の煙草とマッチとドンペリです。準備してきたアニーが持ってきたグラスは1つであったので、アニーの分も持ってくるよう指示しました。そして戻ってきたアニーの目の前で読ませていないミザリーの結末の原稿にライターオイルをかけマッチで火をつけました。
アニーは結末をどうしても読みたくて燃えかけの原稿に飛び込み、床に這いつくばったアニーの頭にポールはタイプライターを振り下ろします。揉み合いの末なんとかポールはアニーを撃退しました。
それから1年半の月日がたちました。ポールは「高等教育」という本を出しました。編集者の女性と出版のお祝いをしているところでした。その女性に監禁された体験記を書くように勧められましたが、ポールは断りました。体験記を書くにはもう一度あの恐怖を思い出さなければならず、遠目に見えたウエイトレスがふとアニーに見えるほど、未だにポールはアニーのトラウマから抜け出せていないのです。
みどころ
この映画の見所はアニー役のキャシー・ベイツがアニーのヒステリックであり、サイコパス気質を感じさせる女性像を演じきっている素晴らしい演技力だと思います。アカデミー主演女優賞も獲得しているキャシー・ベイツの演技は臨場感にあふれ、一回見るとなかなか忘れられないくらいの怖さを残していきます。映画のほとんどが閉ざされたアニーの家でのアニーとポールだけのシーンなのですが、恐ろしすぎるキャシー・ベイツの演技力で飽きずに画面の中に吸い込まれるように見てしまいます。
また、運ばれた当初は雪が降り積もっていましたが、季節が巡る中、誰も訪れない山の中の家で二人が生活する様子が非常に奇妙で孤独感を浮き彫りにしています。閉ざされたアニーの家や、天候、映画内の情景がポールの感情や置かれている状況を示唆しているようにも思えます。
アニーの作家ポール、そして彼の書いたミザリーシリーズが好きすぎて愛しすぎるあまり異常な行動をとり続ける奇妙な行動は今でいう「ストーカー」そのものです。映画「ミザリー」ではあまりにも奇妙に、大げさなストーカー行為を描いていますが、案外誰にでも近くにこのような恐怖は潜んでいるということを思い出させてくれます。
感想
映画「ミザリー」は「it」や「シャイニング」などホラーやサスペンス小説でヒット作を次々出すスティーヴンキングが書いた同名小説「ミザリー」が原作となっています。映画全体を通して深く考察しなければ気づかないようなキーワードがあるわけでもなく、起承転結がわかりやすいストーリーになっており、また少々痛々しい場面はあるもののあまりにも過激な流血シーンなどは映像化されていないため多くの人が受け入れやすい作風であると感じます。
小説版とストーリーが大きくかけ離れている訳ではないのですが、小説版では映画版で十分恐ろしかったアニーがもっともっと恐ろしく描かれています。また、バスターが駆けつけるシーンも小説版とは異なっているので、両方見てみると2倍楽しめるかもしれません。
映画「ミザリー」が公開された1990年当時はまだ「ストーカー」という言葉が浸透していなかったといいます。ストーカー、サイコパス気質がすごく、ヒステリックな彼女の恐怖を見ていると、幽霊やゾンビなんかより、よっぽど人間が恐ろしく感じます。