エグザム【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

制作国:イギリス
上映時間:101分
原題:EXAM
配給:クロックワークス
監督:スチュアート・ヘイゼルダイン
出演:ルーク・マブリー
ジミ・ミストリー
チュク・イウジ
ポリアンナ・マッキントッシュ
ジェンマ・チャン
閉じ込められている場所:試験会場

 

あらすじ

ある企業の最終就職試験の受験資格を手に入れた国籍の全く違う8人が試験会場に到着しました。8人が席に着席すると、試験監督が試験の説明を始めます。

この試験のルールは3つです。1つめは、試験監督及び出口のドアに立っている警備員と一切話してはいけないこと、2つめは、試験用紙はいかなる理由があっても“損じ”ないこと、3つめは、試験会場からはいかなる理由があっても退出してはならないことです。この3つのうち1つでもルールを破るとその場で失格となってしまいます。試験時間は80分、1つの質問に対して答えは1つです。

試験が開始され、8人が解答用紙をめくると試験用紙は白紙でした。まっさらな試験用紙を前に8人の受験者は混乱します。1人の女性は白紙の解答用紙に志望理由を書き始めました。すると出口ドアの前に立っている警備員が動き出し、彼女を部屋から連れ出そうとします。彼女は試験用紙を質問の答え以外の答えを書いて“損じて”しまったのです。また、彼女は警備員に話しかけてしまい、試験は失格となってしまいました。

受験者は残り7人となってしまいました。そのうちの1人が3つのルール以外のことをしても、失格にはならない点に目をつけ、会話を始めました。彼は残り7人に見た目の特徴からニックネームをつけて呼び始めました。自らをホワイトと名乗ります。ホワイトは全員で協力して質問を探そうと提案しました。7人中6人は賛成したのですが、デフと名付けられた引っ込みがちな男性1人が反対しています。

6人は、まず光に着目しました。光によって文字が浮き出るのではないかとライトに紙をかざしましたが文字は見えません。

次に、ライトの中の非常灯に目をつけ、ライトを壊し非常灯を点灯させますがそれでも文字は見えません。さらにその後も、非常灯の奥の赤外線の蛍光灯、“損じた”1人目の解答用紙を使って体液をつけてみたりと試していきますが文字が見えることはありませんでした。

ブルーネットやダーク、ブラックは引き抜きにより応募してきましたが、ホワイトやブラウンは自ら応募していました。引き抜きにより応募した彼らは企業情報をいくつか知っていましたが、ホワイトとブラウンは知りません。ホワイトとブルーネットが口論になる中、ダークたちの情報から会社の名前がわかりました。どうやらこの会社は製薬会社で以前世界的に若者に広まった病気の薬を開発していたようです。

行き詰まって着目したのはスプリンクラーを発動させることでした。ブルーネットは警備員のポケットからライターを見つけて奪い取ります。このことはルールに違反しないため、警備員はロボットのように微動だにすることはありません。ブルーネットが椅子にのり、ライターを近づけますが天井が高く、反応しません。そして“損じた”紙に火をつけて近づけました。しかし、その紙はホワイトがこっそりブルーネット本人の試験用紙にすり替えていたため、ブルーネットは失格となり、またスプリンクラーから放射された液体でも質問の文字が浮かび上がってくることはありませんでした。

ホワイトは暴走し始め、気に入らなかったデフを脅し、デフ本人の試験用紙を破かせ、失格にさせました。連れていかれるデフは眼鏡を落としていきます。デフはほかの受験者が相談しているとき、一人タイマーのそばにいて眼鏡と割れたガラスを使ってぼそぼそと独り言を言っていました。

ホワイトのやり方があまりにもひどかったためブラックが怒って殴り気絶させ、いすに縛り付けました。しかし彼の様子がおかしくなってきたのです。実は彼も世界的に広まった病気にかかっており、毎日決められた時間に薬を服用しなければ中毒症状を起こし、死んでしまうのです。しかし、ブラウンが彼の薬を盗んでいました。そしてブラウンが薬を手ではじいて溝に落ちてしまいます。ダークはホワイトを助けるために試験監督に声をかけてしまい、失格となります。ブロンドがヘアピンで溝から薬を拾ってホワイトを助けますが、意識が回復したホワイトは自分が質問を見つけたことを話しました。そしてライバルたちを失格に追い込もうとします。

ホワイトは警備員から銃を奪い、ブラウンを退出させます。ブロンドがブラックに合図して逃げようとしますが、ブラックは撃たれて倒れてしまいます。時間切れになってホワイトが試験監督に俺こそが答えだと話しかけますが、ホワイトは失格になってしまいます。少し前に失格になったデフが制限時間をいじっていたのです。そのためまだ試験時間内だったのです。足を片方だけ踏み入れて完全に退出していなかったブロンドがデフの独り言と眼鏡に着目し、眼鏡とガラス片を使って解答用紙を見てみると「質問1」と記されていました。

デフが戻ってきました。眼鏡を返すと何か質問は?とブロンドは聞かれましたが、ないですと答えました。最初の質問の答え、つまり1番目の質問の答えが正解だったのです。

銃で撃たれたブラックですが彼もホワイトと同じ病気でした。銃弾は病気の特効薬だったので、彼は生き返りました。そしてデフこそがこの会社のCEOだったのです。そしてブロンドが採用されました。

 

みどころ

この映画のみどころは、物理的には出口があっても精神的に密室の状況下でいかにして自分1人が採用されるためにどう動いていくかの心理戦にあると思います。採用されるための質問は何なのか?8人と一緒に考えながら一緒にはらはらどきどきすることができます。また、密室サスペンスの種類にはなりますが、流血表現やグロテスクな表現などはほとんどないため、サスペンスは好きだけど生々しい表現が苦手、という方でも楽しめると思います。あれはこれはとさまざまな方法を試していきながら、試験やルールの本質を映画の物語のなかに一緒に入って考えていく楽しさがあります。

また、どんどん受験者が減っていく生き残り戦で終わるのかと思いきや実はCEOのデフが最初から受験者に混じっていて一緒に働きたい仲間を探していて最後にまた登場するというどんでん返し的要素も楽しめます。

 

感想

密室系サスペンスという固定概念で映画を見進めると、別に連れ出されて痛いことをされるわけでも、密室内で特別痛いことをされるわけでもないため少々刺激が足りないかもしれません。

密室内で質問を次々試すシーンもいい意味で検討がつきやすいパターンを次々試していくので、痛々しい要素が少ないことや、ルールが3つだけ、就職試験でルール違反は失格というわかりやすい展開からして多くのサスペンス映画を見てきたサスペンス中級者、上級者ではなく、サスペンス初心者向けかもしれません。

Posted in ソリッドシチュエーションスリラー映画 | Leave a comment

devil【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

制作国:2010/アメリカ
上映時間:80分
原題:devil
配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
監督:ジョン・エリック・ドゥードル
出演:クリス・メッシーナ
ローガン・マーシャル=グリーン
ジェフリー・エアンド
ボヤナ・ノヴァコヴィッチ
ジェニー・オハラ
ボキーム・ウッドバイン
ジェイコブ・バルガス
マット・クレイヴン
ジョシュア・ピース
ジョー・コブデン
閉じ込められている場所:エレベーター

―逃げ場と視界を奪われたエレベーター内での密室連続殺戮劇ー

あらすじ

物語はとある男性が高層ビルから飛び降りることから始まります。
男性の手にはロザリオが握られていましたが、事件性が見られなかったため、
警察は自殺と判断します。

ちょうどその時、自殺現場の近くのビルで警備員の男性、精悍な男性、老女、
可憐な女性、セールスマンの計5人が同じエレベーターに乗り合わせます。
しかし、そのエレベーターが突如停止し、電波も遮断され外部と連絡が取れず、
5人はエレベーター内に閉じ込められてしまいます。

エレベーターという他人とのパーソナルスペースが保てない空間に閉じ込められ、
5人は不快そうにしながらもすぐに動き出すだろうと余裕の表情で待っていますが、
突然エレベーター内の電気が消え、再び点いたときに女性が怪我を負っていたことにより事態は急変。

電気が消える直前まで女性にちょっかいをかけていたセールスマンを疑い、
彼を犯人と決めつけて4人はセールスマンを監視します。

するとまた電気が消え、次に点いた時に彼らが見た光景は、
犯人だと思っていたセールスマンの変わり果てた姿。

誰もが容疑者となり得るエレベーターという閉鎖空間で、互いを疑いあう4人。

その後も明かりが消えるたびに悲惨な死に方をして、次は自分が殺されるかもしれないと残った人間の精神は極限まで追い詰められていきます。

そんな彼らを救出すべく動くのは管理室でエレベーターの異変に気付いた
信心深い警備員と、老齢の警備員、そして近隣で起こった自殺の調査でビルに訪れていた刑事。

エレベーター内で次々と起こる殺人の犯人が誰かを突き止めるために
エレベーター内の全員の身元の情報収集をする刑事は、やがて驚愕の真実を知ることになる。

見どころ

この映画の見どころの1つ目は、ただエレベーターという閉鎖空間にただ閉じ込められるだけではなく、電気が消えることにより視界も奪われ、挙句の果てには電気が消え、次に点いた時には必ず人が死んでいるという、幾重にも重なった恐怖の条件を前にした登場人物の極限まで追い詰められた心理状態です。

彼らは少しでも怪しいと感じた人物を一方的に疑いますが、しかし次の瞬間にはその疑っていた人物が死んでいる。

1人、また1人と死んでいくなか、逃げ場のないエレベーターで彼らの心情はじょじょに殺される前に殺してしまえといった風に追い詰められていきます。

電気が消えるたびに次々と起こる怒涛の展開や変化していく登場人物の心理状態から一瞬たりとも目が離せません。

2つ目は、密室であるエレーベーター内を、管理室のモニターで他者が見ることができ、一方的にではありますが連絡も取ることができる点です。

密室というのは外部との連絡が取れないことがデフォルトと思い込んでいた私には、この展開は実に新鮮でした。

しかし、いくら外部と連絡が取れようが、彼らが助けようと周りが動こうが、悪魔という人を超越した存在には一切歯が立たず、悪魔がいかに理不尽か、人間が悪魔のような存在にいかに無力かを思い知らされるようでした。

3つ目は、悪魔は遠い存在でなく、私たちのすぐ身近にいると言わんばかりのカメラ演出です。

最初、逆さになった町を上から眺めるアングルで物語は始まります。一見それっぽい雰囲気を演出するためかなと何気なく見ていたのですが、結末や制作秘話を見てから改めて見ると、悪魔が次の獲物を物色していると解釈すればしっくりきます。

その他にも、エレベーターに乗る前の登場人物の1つ1つのカットは、人物を紹介するのと同時に悪魔が彼らを標的に定めた瞬間なのではないか?と捉えると、あまりにも計算された演出に思わず唸りました。

これからこの映画を観る方には、何気ないシーンも意味があると思って注意深く観て頂きたいです。

感想

全体的な感想としては、テーマが一貫していたので、演出に一切の無駄がなく、終始飽きずに観ることができる映画でした。
声優はどの方も上手で違和感もないので、字幕と吹替どちらで観ても楽しめます。

どちらで観るか迷われている方は、物語のテーマを正確に把握しながら観たいという方は字幕。

作品に入り込みたい、映像だけに集中したい人は吹替で観て頂ければよいと思います。

ホラーにも様々なタイプがあるので、貞子や呪怨のような、おどろおどろしいホラーを期待してみる人にとっては物足りないかもしれません。

ですが作品としての出来は非常に良いです。

DVDには特典映像や制作秘話があり、メインストーリーで語られなかった登場人物の生活のワンシーンを観ることができ、制作陣が何を思ってこの映画を撮ろうと思ったのかが語られているのでオススメです。

この映画のレビューを見ていて、何人かが指摘していた「悪魔が人を裁くのはおかしくないか?悪魔は人を堕落させる存在なのでは?」という点は、制作秘話で明かされています。

ネタバレしてしまうと、悪魔は義憤に駆られて彼らを裁いたのではなく、罪を犯しながらも償わず自分を偽り続けている彼らを好き勝手にいたぶり、魂を奪って地獄に落とすために彼らを殺していただけです。私もこれは制作秘話を見てから気づいたのですが、改めて映画を見直すと、冒頭の整備士の語りに「用心せよ。悪魔は獅子のように歩き回り、誰を食い尽くそうか求めている」という一文がありました。

他にも悪魔から逃れる方法などを作中で説明してくれています。
映画の何気ない一言も、ちゃんと意味があるんだなあと実感しました。

Posted in ソリッドシチュエーションスリラー映画 | Leave a comment

リミット【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

製作国:スペイン・オーストラリア
上映時間:1:35:20
原題:Buried
配給: ライオンズゲート・ギャガ
監督:ロドリゴ・コルテス
出演:ライアン・レイノルズ、ロバート・パターソン、ホセ・ルイス・ガルシア・ペレス、スティーヴン・トボロウスキー、サマンサ・マシス
閉じ込められている場所:土の中

 

あらすじ(ネタバレ無し)

ポール・コンロイが目覚めると、そこは人が寝る広さ度しかない木の棺らしき中…トラック会社(CRT社)に務める彼はイラクのバクーバでトラック数台でキッチン用品を運んでいる途中、突然爆発が起きて男たちに乱射された際に気絶し、今に至るのです。

事態を飲み込めずポールは混乱しつつもペンやライター、少量の酒などを持っていることを確認して、足元に携帯電話があるのに気付きます。911に電話をしますがオハイオ州につながってしまったため、家の留守電に国防総省に連絡するよう伝言を残したり、FBIのシカゴ支部に電話したりして事情を伝えますが救出の見込みが無くでいら立つポール…

そして、一度かかってきた電話に掛け直してみると「兵士だろ?」と見覚えの無いことを言われすのです。ポールをさらった犯人は9時までに500万マネー用意しないと助からないと言って電話を切りました。用意できるアテも無く途方に暮れるポールでしたが、ドナに電話をして国務相の番号を教わり、掛けてみますが身代金は払えないとのこと…ポールは「俺の命はどうでもいいのか!?」と食って掛かりますが、テロ対策担当のブレナーに回されるのでした。

ブレナーは落ち着いており、ポールを救うために尽力すると言います。すると、犯人から再び電話があり、足元の袋に入っている袋のメモを読み上げて人質ビデオを撮るようにと命じました。ひとまずポールはブレナーに電話をして犯人の電話番号や、自身が不安障害であることを伝えます。今度は犯人からメールが…そこには同僚の女性が銃を突きつけられており、ポールは慌てて人質ビデオを撮影して送りますが・・・果たしてポールは救出されるのか?犯人の同行にも注目です。

 

結末・ネタバレ

ポールの願いもむなしく同僚の女性は殺され、その模様を録画した動画を見てポールは絶望します。酸素を節約するために大人しくしていたポールですが、木箱のすきまからガラガラヘビが入って来たため、持っていたお酒をかけてライターで火を付けました。火に驚いたヘビは逃げ出しましたが、今度は地上で爆撃があったせいで木箱にヒビが…サラサラとした砂が入りこんで来ることで、ポールに残された時間は少なくなるのです。

トラック会社から電話があり、事情を説明すると急に録音を始めると言い出すのでした。その内容はポールが拉致に合った時は既に当社の社員では無かったという通知…死を悟ったポールは妻や子供のために遺言用のビデオを録り始めるのです。またもや犯人から人質ビデオを撮れと言われるのですが、今度は「血を流せ。指をナイフで切断しろ」とのこと…ポールは死を覚悟していたため撮ろうとしませんでしたが、ブレナーから「犯人の他の一味から情報を得て棺の場所に近づいている」との連絡が!

それを聞いたポールは指を切り落とす動画を録画し犯人に送り、時間を稼ぎつつも家族に手を出さないように言うのです。しかし、砂はもうじき棺を埋めそうに…ブレナーと電話をつなぎつつも彼が舞台と共に掘る音が聞こえてきますが、「そんな…」と声を上げました。ブレナーが掘り起こした棺にはポールのではなく、それを聞き届けたポールは砂に埋もれてしまうのでした。

 

閉じ込められた状況に緊迫感!

ポールはどうして閉じ込められたのか、そして誰に閉じ込められたもわからず焦る姿が緊迫感満載の映画の始まり!ライターで明かりを付けると頭がすぐにぶつかるほどの高さしか無く、身体の向きを変えようとするのも難しい木箱の棺の狭さは見ているだけでも息が詰まる思いでした。

カメラワークもポールをアップにしたり、持っているモノだけを映したり、明かりが付いたり消えたりする演出も合わせて危機感が伝わってきましたね。そして、不安障害を患うポールは一度パニックになるとしばらくそれが続いてしまう様子が印象的です。こんな目に遭うことにバタついたり、せっかく電話がつながった知人に怒鳴ってしまい、その後も口汚く悪態をついたり…余裕の無さがリアルさも表していました。
そうしたポールのパニックになった描写や危機が迫る際のBGMと、大人しく寝ているだけしかない時のBGMの緩急が良くて音響の演出にもこだわりを感じさせます。

 

誘拐犯も電話相手も恐ろしく思えてくる内容

ポールが色々な人に電話を掛けていくのですが、家族の電話は留守電、公的機関ではたらい回し…そうした状況下において、身代金を払ってもらえないことに怒りを露にするポールですが、大体の相手は事務的な対応しかしてくれないのに恐ろしさを感じましたね。ブレナーだけは懸命に捜索し、時には正直に現状を伝えてくれる誠実さもあったのですが…ポールが生きて戻れなかった結末には驚きです。
その中でもトラック会社から電話があって、「あなたは職務規定に違反したため、事件に遭った際には自社の社員では無かった」と言い放つ非情さには怒りを通り越して呆れてしまいました。実際にポールのような目に遭ったら、こんな風になるのかもしれませんね…

一方で、犯人の冷酷さも恐ろしい!「誘拐はビジネス」とのことで淡々と人質ビデオを録らせようとし、家族の住まう住所も脅しの材料にする…こうしたことを繰り返しやって来たとのことで、これまで何人の犠牲者がいて絶体絶命の危機に瀕したのかと思うと怖いですね。

動きようのない閉鎖空間にて少量の明かりと、電池が限られた電話、そしてタイムリミットが迫る状況が揃い、助けが見込めないストーリーにハラハラさせられる映画です。

Posted in ソリッドシチュエーションスリラー映画 | Leave a comment

フライトプラン【ソリッドシチュエーションスリラー映画レビュー】

概要

製作国:アメリカ合衆国
上映時間:98分
原題:Flightplan
配給:ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ/ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
監督:ロベルト・シュヴェンケ
出演:ジョディ・フォスター
閉じ込められている場所:機械室

あらすじ・ネタバレ

・あらすじ(ネタバレ無し)

飛行機のエンジニアであるプラットは夫のデビットを事故で亡くし、棺に入れられたプラットと共に飛行機で移動をしていました。6歳の娘のジュリアもデビットの死に動揺しつつ、プラットに隠れて搭乗。しばらく飛行機に乗って過ごし、眠りにつく際にプラットはジュリアが寝やすいようにと思って空いてる席に移動したのです。そうして眠った後、起きたプラットはジュリアがいなかったことに驚き、飛行機内を探し回りますが見つからず…搭乗員に相談すると「乗客名簿にジュリアが載っていない」と伝えたことで、プラットは動揺し機長に話をさせるよう言うのでした。

機長はプラットが「ジュリアのリュックも無くなっている。誘拐かもしれない」という話を聞いて半信半疑ながら彼女の捜索に手を貸すことにします。425人の乗客にシートベルトを付けさせて座らせ、その間に搭乗員たちと共に探し回りますが見つからず…その際にプラットはアラブ人の男性2人に見覚えがあり、「昨晩、娘の部屋を見ていた」と言って誘拐犯だと疑いますが保安官のカーソンがそれを止めるのでした。

機長は病院から報告を受け、ジュリアはデビットと共に死んだという事実をプラットに話します。プラットは取り乱し、再びアラブ人の元に行って問い詰めようとしますが突き飛ばされて気絶してしまうのでした。

―果たしてジュリアの生死は?限られた飛行機という空間で起きた事件の真実とは?

 

・結末・ネタバレ

手錠をかけられたプラットが目覚めると隣には乗客のセラピストが話を聞きに来ていました。上の空で話を聞きながら「ジュリアは既に死んでいた…?」と思い始めたプラット…しかし、曇った窓にジュリアが描いていたハートマークがあることに気付いて死んでいなかったことを確信。カーソンにトイレに連れて行ってもらい、天井裏から飛行機の機器の回線を操作して、飛行機内を混乱させている間に貨物室へ。

収納されていた車を探したり、デビットの棺も開けてみましたがジュリアは閉じ込められておらず…カーソンが来てデビットを拘束して席に連れ戻し、彼女が「棺は一つしかなかった。ジュリアは生きている」とカーソンを説得しようとします。しかし、実は彼がこの騒動の主犯であることにプラットは気付きません。カーソンは機長に「プラットが自作自演をして多額のお金を要求している」と伝えてお金を振り込ませ、X線検査がされない棺に密かに爆弾(起爆装置)を持ち込んでいたのです。爆弾を設置し、仲間の搭乗員にプラットを見張らせておきつつ、緊急事態となった飛行機は近くの空港に不時着。

爆弾処理班が取り囲む中で乗客が避難した後、カーソンの言動を不審に思ったプラットは彼を呼び止めて飛行機で対峙するのです。プラットを殴ったスキに機械室でジュリアを見つけ、そこに仕掛けられた爆弾に気付き、追ってきたカーソンを巻いて爆弾を起爆させるのでした。共犯者の搭乗員が捕まり、プラットはジュリアを助けることができてハッピーエンドです。

 

見どころ・感想

・飛行機内で起きる事件にハラハラ!

上空を飛ぶ飛行機のどこにジュリアがいるのか?と思いきや、母親のプラットが錯覚を見ているのでは?という疑問も出てくるスリリングな映画でしたね。最愛の夫を亡くし、ジュリアまで死んでいたのではないかと突きつけられたら、精神状態が極限になりそうです。そんな彼女にジュリアが描いていた窓のハートマークに気付いて欲しいと思うようになる後半はとてもハラハラさせられました。

飛行機といえども400人以上が乗るとても広いタイプの機内であり、「絶対にジュリアはどこかにいるはず!」と思って探すと「貨物室や機械室など小さな部屋がたくさんあって一人では回り切れない」という焦りが伝わってくる…結局、プラットの味方は一人もいなかったため、それでも閉じ込められたジュリアを探し続けて、時には乗客をとても不安にさせる行動も辞さない姿勢は母親の強さを感じさせました。

格納された車を見つけたら躊躇せずにフロントガラスを割って中を探したり、デビットの遺体が入った棺を泣きながら開けたり…必死さが伝わるプラットに対し、「棺にジュリアがいたらどうしよう…」というシーンが一番印象的でしたね。

 

・事件の伏線がたくさん!真実に驚き!

ジュリアを見かけた乗客や搭乗員がいなかったのは、プラットの前の席の子供たちがとてもうるさく、多くの者たちが子供に対して辟易していたのが原因の一つでした。そして、ジュリアを探すよう言われた搭乗員の中には真面目に探してくれない人も多く…逆にジュリアを連れ去った時に不自然さを感じる者もいなかったようですね。

ジュリアの登場した記録が無かったのは仲間の搭乗員の仕業だったり、棺に爆弾を収納しておいたのは同じく仲間の葬儀屋だったりと、カーソン以外にも仲間が複数いると明かされた終盤は驚きの連続!最後にプラットとカーソンが対峙するシーンで、大金を得てプラットを犯人に仕立て上げれたと安心しきったカーソンが我が物顔で今回の計画の全容を話すという展開が分かりやすかったです。
アラブ人は無関係で、彼を疑い始めたプラットはちょうど良かったと思っていたり、デビットは事故死では無く彼らの作戦のために殺されたと明かされたり…念入りな作戦にビックリですね。

プラットの作戦を知った上でもう一度見直したくなる映画『フライトプラン』は、母親の強さと大切な家族を思う心が良く伝わってくる内容でした。上空を飛ぶ飛行機に閉じ込められたり、犯に扱いをされて孤独な状況に陥ってしまったりしたら…自分ならどうするでしょうね?

Posted in ソリッドシチュエーションスリラー映画 | Leave a comment

127時間

作品概要


製作国:アメリカ合衆国 イギリス
上映時間:94分
原題:127Hours
配給:20世紀フォックス/ギャガ
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・フランコ ケイト・マーラ
閉じ込められている場所:ブルー・ジョン・キャニオン (アメリカ ユタ州 キャニオンランズ国立公園内)の渓谷の岩に挟まれる

あらすじ

ある1人の男性がアメリカ ユタ州にあるキャニオンランズ国立公園へキャニオニングに向かっていました。

根っからの冒険家である彼の名前はアーロン・ラルストン。

家族からの電話も無視し、誰へ行き先を告げることもなく颯爽と自宅を飛び出した彼は車、自転車を乗り継ぎ目的地にたどり着きます。

音楽を聴き、道中で出会ったハイカーの女性2人を案内しながら、気ままにキャニオニングを楽しむアーロン。

しかし、女性2人と別れた後、アーロンは足を滑らせ、岩石と共に大地の裂け目へ滑落してしまい、その岩石に右腕を挟まれて身動きが取れなくなってしまいます。

岩壁の狭間から覗く青い空を見上げ途方に暮れるアーロン。気を取り直し脱出するために持ち物を探り、その中にあったナイフで岩を削ろうと試みますがびくともしません。

刻々と過ぎる時間、徐々に減っていく水と食料。

5日が過ぎ、過去の記憶がフラッシュバックし、恋人との別れ、母親に折り返しの電話をしなかった事、これまでの人生を振り返り後悔が込み上げてきます。

6日目の朝、アーロンはある決断をします。

腕をねじり骨を折り、とっくに切れ味を失ったナイフを腕に突き刺したのです。

そう、アーロンは自ら右腕を切り離す事にしたのです。

気を失いそうになりながらかなりの時間を掛けようやく腕を切り離したアーロンは岩壁と自分のものではなくなった右腕、それを岩肌に押し付けている巨大な岩石に「ありがとう」と言い残しその場を去ります。

朦朧としながら歩き続けるアーロンの目に親子3人の姿が映り、最後の力を振り絞り「助けてくれ」と叫びます。

3人はその声に気付き、彼を介抱します。程なくして、アーロンを捜索していたレスキューヘリが上空に現れ、無事救助されました。

説明

何よりもまず、これが実話であるという事に驚きです。

本作は2004年出版の自伝小説『アーロン・ラルストン 奇跡の6日間』を原作としており、キャニオニング冒頭の天然プールに飛び込むシーン以外はほぼ忠実に再現出来ていると本人も語っています。

腕を挟まれ身動きが取れなくなった彼の究極の決断。

〝自らの腕を切り落とす〟

本作を語るうえでこのシーンが真っ先に出てくるのではないでしょうか?

あまりにリアリティのある切断シーンに気を失う観客もいたほど、ショッキングな映像が流れるのです。

助けが来る見込みはありません。水、食料もほぼ底をつきかけています。

この極限状態で5日間岩壁に挟まれた彼は何を考え、何を思ったのか。

人生を振り返り、今自分がここにいるのは必然だと感じるようになり、時には知恵を絞り、時にはユーモラスに、時には覚悟をもってこの状況に向き合いながら下した腕を切り落とすという決断に観客自身も目を背けず、向き合わなければいけないという思いが出てくるのです。

ラストシーン、アーロン本人が現在も果敢に登山に挑戦している姿が映し出され、生きる事への執着、希望に満ちたエンディングで本作は締めくくられます。

 

さらに注目すべきは主演のジェームズ・フランコが魅せる演技です。

アーロン本人の奔放さ、ユーモア、自信過剰な部分がしっかりと表現されており、映画後半の後悔の念がより色濃く感じ取れます。

監督ダニー・ボイルの〝生〟への描写力も相まって濃厚な人間ドラマが紡ぎ出されます。

感想

ブルー・ジョン・キャニオンの美しい景観とPOPな音楽で心踊るような導入から一転、絶望の淵に沈み、精神的、肉体的に追い込まれるアーロンと共にこちらまで息が苦しくなり、緊張が高まり、動悸がするほどの没入感を感じます。

自分ならどうするだろう?自分はこんなにも気丈に振舞えるだろうか?

そんな事を考えながらたどり着く、腕を切断するシーン。

観なければよかったと後悔するほどのショッキングな映像を目の当たりにしますが、そこをアーロンと共に乗り越え、エンディングを迎える頃には明日への活力がみなぎってくる素晴らしい映画でした。

94分間のほとんどがアーロンが腕を挟まれた岩壁の狭間で物語が進行する、いわばワンシチュエーションムービーとなっていますが、飽きる事無く彼が過ごした127時間を追体験できる本作は一見の価値ありです。

Posted in ソリッドシチュエーションスリラー映画 | Leave a comment