作品概要
製作国:アメリカ合衆国 イギリス
上映時間:94分
原題:127Hours
配給:20世紀フォックス/ギャガ
監督:ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・フランコ ケイト・マーラ
閉じ込められている場所:ブルー・ジョン・キャニオン (アメリカ ユタ州 キャニオンランズ国立公園内)の渓谷の岩に挟まれる
あらすじ
ある1人の男性がアメリカ ユタ州にあるキャニオンランズ国立公園へキャニオニングに向かっていました。
根っからの冒険家である彼の名前はアーロン・ラルストン。
家族からの電話も無視し、誰へ行き先を告げることもなく颯爽と自宅を飛び出した彼は車、自転車を乗り継ぎ目的地にたどり着きます。
音楽を聴き、道中で出会ったハイカーの女性2人を案内しながら、気ままにキャニオニングを楽しむアーロン。
しかし、女性2人と別れた後、アーロンは足を滑らせ、岩石と共に大地の裂け目へ滑落してしまい、その岩石に右腕を挟まれて身動きが取れなくなってしまいます。
岩壁の狭間から覗く青い空を見上げ途方に暮れるアーロン。気を取り直し脱出するために持ち物を探り、その中にあったナイフで岩を削ろうと試みますがびくともしません。
刻々と過ぎる時間、徐々に減っていく水と食料。
5日が過ぎ、過去の記憶がフラッシュバックし、恋人との別れ、母親に折り返しの電話をしなかった事、これまでの人生を振り返り後悔が込み上げてきます。
6日目の朝、アーロンはある決断をします。
腕をねじり骨を折り、とっくに切れ味を失ったナイフを腕に突き刺したのです。
そう、アーロンは自ら右腕を切り離す事にしたのです。
気を失いそうになりながらかなりの時間を掛けようやく腕を切り離したアーロンは岩壁と自分のものではなくなった右腕、それを岩肌に押し付けている巨大な岩石に「ありがとう」と言い残しその場を去ります。
朦朧としながら歩き続けるアーロンの目に親子3人の姿が映り、最後の力を振り絞り「助けてくれ」と叫びます。
3人はその声に気付き、彼を介抱します。程なくして、アーロンを捜索していたレスキューヘリが上空に現れ、無事救助されました。
説明
何よりもまず、これが実話であるという事に驚きです。
本作は2004年出版の自伝小説『アーロン・ラルストン 奇跡の6日間』を原作としており、キャニオニング冒頭の天然プールに飛び込むシーン以外はほぼ忠実に再現出来ていると本人も語っています。
腕を挟まれ身動きが取れなくなった彼の究極の決断。
〝自らの腕を切り落とす〟
本作を語るうえでこのシーンが真っ先に出てくるのではないでしょうか?
あまりにリアリティのある切断シーンに気を失う観客もいたほど、ショッキングな映像が流れるのです。
助けが来る見込みはありません。水、食料もほぼ底をつきかけています。
この極限状態で5日間岩壁に挟まれた彼は何を考え、何を思ったのか。
人生を振り返り、今自分がここにいるのは必然だと感じるようになり、時には知恵を絞り、時にはユーモラスに、時には覚悟をもってこの状況に向き合いながら下した腕を切り落とすという決断に観客自身も目を背けず、向き合わなければいけないという思いが出てくるのです。
ラストシーン、アーロン本人が現在も果敢に登山に挑戦している姿が映し出され、生きる事への執着、希望に満ちたエンディングで本作は締めくくられます。
さらに注目すべきは主演のジェームズ・フランコが魅せる演技です。
アーロン本人の奔放さ、ユーモア、自信過剰な部分がしっかりと表現されており、映画後半の後悔の念がより色濃く感じ取れます。
監督ダニー・ボイルの〝生〟への描写力も相まって濃厚な人間ドラマが紡ぎ出されます。
感想
ブルー・ジョン・キャニオンの美しい景観とPOPな音楽で心踊るような導入から一転、絶望の淵に沈み、精神的、肉体的に追い込まれるアーロンと共にこちらまで息が苦しくなり、緊張が高まり、動悸がするほどの没入感を感じます。
自分ならどうするだろう?自分はこんなにも気丈に振舞えるだろうか?
そんな事を考えながらたどり着く、腕を切断するシーン。
観なければよかったと後悔するほどのショッキングな映像を目の当たりにしますが、そこをアーロンと共に乗り越え、エンディングを迎える頃には明日への活力がみなぎってくる素晴らしい映画でした。
94分間のほとんどがアーロンが腕を挟まれた岩壁の狭間で物語が進行する、いわばワンシチュエーションムービーとなっていますが、飽きる事無く彼が過ごした127時間を追体験できる本作は一見の価値ありです。